日本の財政は本当に危機的なのか?②

経済主体
 前回は自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない、という点について考えてみました。
 今回は民間経済(家計・企業)と国家財政(政府)の違いについて考えてみたいと思います。

◆家計・企業の借入と政府の借入(国債発行)を同一視していないか?
 マクロ経済では、家計・企業・政府の3つの経済主体が前提となります。家計・企業はいわゆる民間経済、政府は国家財政に該当します。
 家計は一般個人の集合体です。その財政構造は、給料や年金の収入に対して、生活費・娯楽費などの支出があり、住宅などの高額商品を購入する際に手元にお金が無ければ銀行で住宅ローンを組みます。
 企業は民間企業などの集合体です。その財政構造は売上という収入に対して、仕入経費・人件費などの支出があり、設備など多額の投資をする場合は銀行から融資を受けることになります。
 家計と企業が借入する際の条件として、返済財源が確保されている必要があります。銀行は返済能力のない家計・企業に対して融資を行いません。
 一方、政府の財政構造は主として税収という歳入に対し、公共事業、社会保障費などの歳出があり、不足分は国債発行によって補います。  
 このとき政府は、家計・企業のように借り入れに際して返済財源を確保しなければならないという制約条件がありません。

◆国債発行は「信用創造」であるという事実
 従来、マスコミの報道では、国債発行は国の借金であると解説されてきました。しかし「国の借金」という表現は、国債発行の一面しか説明をしていません。
 国債発行の本質は、「通貨供給」である点が完全に抜け落ちています。
  「通貨供給」とは、政府が予算執行のために国債を発行すれば、その分、民間に通貨が供給されることになることを意味します。民間へ通貨が供給されれば、民間の資金が潤うため民間経済に対してプラスの効果があります。このことは、銀行による融資が「信用創造」をもたらしていることと同じ効果があります。
 国債発行 = 通貨供給 = 信用創造  となります。

◆政府は国債を返済しなくてはいけないのか?
 国債発行が通貨供給であるとしても、「いつかは国債を返済しなくてはいけないのではないか?」という指摘があります。
 仮に国債を返済するとしたら、その返済財源はどこから持ってくることになるかというと、それは民間から集めた税金で国債を償還(返済)することになります。もし国債を税収で返済すると、その分の資金が民間から消えることになるので、民間経済に大きなダメージを与えることになります。
 したがって、通常、世界のどの国も税収で国債を返済するということはしません。国債の発行残高はどこの国も増え続けていますが、事実上、問題にはなっていません。
 では国債の償還期限が到来したらどうするか?それは、借換債を発行して形式上償還するだけです。
 国債はいったん発行したとしても、その後利子を払いながら、借り換えをし続ければ問題がありません。
 なぜなら、政府は家計や企業とは異なり、永遠に存続することが前提となっているからです。
 この文脈から、いわゆる国債の「60年償還ルール」は意味が無いということがわかります。
 このように、財政破綻論者の議論においては、民間と政府の借入のどちらも返済義務があるものとして同一視していたり、国債発行は民間経済を潤す通貨供給=信用創造であるということや、政府は永遠に存続する前提なので国債を借り換えし続けても問題が無い、という事実が見落とされていると思います。
 
2023年10月02日 17:41

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